ボストンはすでに朝夕肌寒く、過ごしやすいというよりは寒さを感じるようになってきました。そろそろ紅葉の季節らしいので、時間があればハイキングに出かけたいと思っています。
Portico Brewing
さて今回は、先日発表された H-1Bビザに関する大統領令 を踏まえ、2025年9月現在のアメリカ留学・就労ビザの状況を整理してみます。
H-1Bへの影響(2025年9月21日発効)
今回の大統領布告「Restriction on Entry of Certain Nonimmigrant Workers」はH-1Bビザ保持者を直接対象としています。私自身もH-1Bで就労中のため、大きな影響があります。すでにH-1Bで仕事を開始し、パスポートにビザスタンプもあるため、直ちに働けなくなるわけではありません。しかし 一度国外に出ると、再入国に10万ドル(約千五百万円)を支払う必要がある可能性 があります。つまり、当面は米国外に出られない状況です。また、延長申請自体には追加Feeが不要と解釈できますが、延長後に新しいビザを取得する際、国外での申請時にFee未払いだと発給されないリスクがあります。さらに、アメリカ国内であっても 転職は「新規申請扱い」となり、同額のFeeが発生します。
この大統領令は発表直後であり、実務レベルでどのように運用されるか不透明です。ただし、現政権中は有効であり続ける可能性が高いと考えています。個人的には、厳しすぎる内容のため、修正や撤回を期待していますが、少なくとも当面は「帰国はおろか国外渡航も難しい」状況であると認識せざるを得ません。
ビザ別の現状まとめ(研究者向け)
🎓 留学関連ビザ
F-1(学生ビザ)
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対象:大学・大学院でフルタイム就学
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特徴:Optional Practical Training (OPT)(1年)、STEMなら+2年延長可。Curricular Practical Training (CPT) もあり
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現状:比較的取りやすいが、研究費削減を受け、大学院生の受け入れ数減少傾向。就労制限あり。OPT後はH-1BやO-1への切替が必要。
J-1(交流訪問者ビザ)
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対象:ポスドク、研究員、交換留学など
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特徴:広く研究者に利用される。終了後に2年間帰国義務(212(e))が課される場合あり。
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現状:ポスドク受け入れ全体は減少傾向。ただし志望者も減少しており、チャンス自体ある?HやGC移行時にはWaiverが必要な場合あり。
💼 就労関連ビザ
H-1B(専門職ビザ)
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対象:学士以上の学歴を要する専門職
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特徴:初回3年、最長6年。dual intent(将来的に永住(green card取得)を目指す)可能。配偶者H-4はI-140承認後EAD取得可。
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現状:
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cap-subject(一般企業枠)は抽選制 → 狭き門
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cap-exempt(大学・非営利研究機関)は通年申請可能 → 研究者には有利
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問題点:今回の大統領令により、新規申請や転職に10万ドルFeeが課される。低賃金拒否・高賃金優先の方針ゆえにアカデミアでは採用しにくい枠になる。Feeを払っていないと再入国の際Feeの支払いを求められる可能性がある。
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O-1(卓越能力ビザ)
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対象:科学・芸術・ビジネス・スポーツで「卓越した能力」を証明できる人
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特徴:雇用主単位で申請可能、パートタイム・複数雇用主も可。1〜3年発給、延長可。
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現状:論文・引用・学会発表・受賞歴などが整えば現実的。抽選なし。ただし配偶者O-3は就労不可。
- 問題点:H-1Bの申請費用は雇用主が負担しなければならないが、O-1はどちらでもよいということで、本人負担になりやすく、研究者にとっては 経済的負担が大きい。
その他
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E-2(投資ビザ):日本は条約国だが研究者には不向き。
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L-1(企業内転勤):日本企業から米国法人への転勤用で、研究職には限定的。
まとめ
ここ数十年で見ても、現在はアメリカでの留学・研究・就労において最も厳しい環境といえるでしょう。特にH-1Bをめぐる規制は、アメリカで研究職を志す人々にとっても大きな障壁となりつつあります。 私自身も「長くはアメリカに滞在しないだろう」と考えてはいますが、それでも突然の解雇のような形は正直もう勘弁してほしいところです。せめて半年くらいの猶予は欲しいものです(笑)。さらに、国外渡航が極端に制限されるのも困りものです。すでに有効なビザスタンプを持っている人については、どうか例外的に見逃してほしいです・・・。
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